去年の夏はいかがでしたか?
日本の、東京の上にどっしりと腰をすえたこの強大な夏は、依然としてわたしたちの課題であります。夏を、どうにも気が重い、できれば立ち向かいたくない課題から、考えただけでもわくわくするような、次から次へとアイデアが泉のように湧いてくるようなそんな価値へとかえること、それこそが夏の企業の使命です。
日本のこの難しい夏に匹敵するのは、きっとヨーロッパの頑固な冬でしょう。長く重たく辛い孤独な冬。しかし、ヨーロッパは、この冬を一つの価値へと転換し、文化として磨き上げてきました。冬を歌い、冬を描き、冬を演じる。これらのすばらしい芸術はこの厄介な冬無しでは、生まれてくることがなかったものです。
それと同時に、冬は企業にとってもまた価値であります。冬をもっとこころよく、冬をもっとたのしめるように。そう、冬を追放するのではないのです。冬と上手に付き合うのが、ヨーロッパの冬の企業。例えば、冬の室内がまるで常夏のような気候なら、ぱちぱち薪の爆ぜる常に神秘的に炎のゆらめく暖炉のよろこびを味わうことは出来ないでしょう。深くて豊かに濃いドイツビールも、柔らかく暖かいウールのセーターもみな、冬が寒いからこそたのしめるもの。そう、寒さは確かにひとつの価値なのです。
では、私たちはどうでしょう。
とかく夏を追い出してしまおうとしたり、無視しようとしたり、そんなことばかりではありませんか。そう、あなたは夏を春のように秋のように暮らそうと必死になっていたのではないでしょうか。
夏が素晴らしくするものって何でしょう。暑いからこそ楽しめるものって何でしょう。
ほんとうは、夏のライフスタイルは、そんな視点から描かれるべきではありませんか?
PS dialogue 2015.8
2016.3 (加筆修正)