さあ今年もラクレットの季節、真っ只中です。代表的なスイス料理の一つであるラクレットは、長い秋から冬の寒さを楽しむためのチーズ料理。文化と季節の香りが漂い、食の喜びがぎっしりと詰まった料理です。肌寒くなってくると重厚なラクレットチーズが無性に恋しくなり、家族や友人で集まってラクレットプレートの周りを囲います。その感覚は日本のお鍋にちょっと似ています。
でも日本のお鍋が日本の集団主義文化を映し出す如く、基本的にみんなで同じ中身の鍋をつつく一方で、個人主義文化スイスのラクレットは、一見するとみんな同じものを食べているようで、実はそれぞれが自分の好みに合わせてそれぞれのラクレットを楽しんでいるのです。食卓に並んださまざまな食材から、ラクレットチーズを主役に、好きなものを好きな組み合わせでアレンジします。茹でたじゃがいもの上にトロリと溶けたラクレットチーズをかけてシンプルに食べたり、トマトや玉ねぎなどの野菜をチーズといっしょにプレートに載せて絡ませながら焼いたり、あるいはパイナップルやイチジク、バナナなどを加えてデザート風に楽しんだり…。どんな組み合わせがチーズのおいしさを引立てるのか、チーズといっしょに焼くべきか、それとも敢えて別々に?と、調理の要らないシンプルさの故に、気がつけばラクレットを囲む誰もが小さな研究者。だからこそラクレットは、中世の時代から消えることなく発展し続けてきたのでしょう。
さて、そんな小さな研究者は、ラクレットと最高の組み合わせのパンや飲み物に並んで、ラクレットを一番のおいしさにする室内気候も探求します。外を遮断せず、室内を暖めすぎることなく、ほんのりと暖かくて常に窓から新鮮空気の入ってくる気候空間が、ラクレットにはぴったりです。なにしろラクレットを食べると、大きなエネルギーを得たかのように体がぽかぽかになって、冬のひんやりと冷えた新鮮空気がラクレットのおいしさを引立てる最高の香辛料みたいに感じられるようになるのです。
冬の気候があってこそおいしいラクレット。ラクレットがあればこそ快適な冬の気候。この気候と食の相互作用を生み出すもの、それがピーエスの室内気候デザインです。
PS dialogue 2015.01