冬の寒さが和らぎ始め、金柑の実が甘くなってきた頃、鎌倉山近くの一軒家で、味噌仕込みを行いました。
今では出来上がった味噌を手にすることがほとんどですが、「手前味噌」という言葉にあるように、昔は各家庭で仕込み、その出来を自慢し合う自家製のものが主流でした。発酵食は貴重な食べ物を保存するための手段として考えられた先人の知恵。中でも味噌は、大豆、麹(米、麦、豆など)、塩だけでつくるとてもシンプルな発酵食品です。
農家さんから届いた大豆をホクホクに炊き上げ、一粒ずつ丁寧につぶし、麹と塩を混ぜ、保存容器に詰めると、後は半年〜1年ただ待つのみ。
ここからは、麹菌の出番です。この地域では、1年で最も寒い冬の間に仕込みを整えておくと、春、温度の上昇とともに徐々に菌の活動が活発になり、梅雨と夏のピークを経て、冬に完成となります。味噌づくりには、温暖湿潤な日本の気候をうまく活かす知恵と技術が隠れていました。
しかし、仕込みの後、東京のマンションに味噌を持ち帰ると、その保管場所に困りました。「保管は冷暗所で」といいますが、私の住むマンションは気密性が高く、一旦室内に入ると全体的に温度が高いところばかり。保管は、吹きさらしのテラスか、冷蔵庫になってしまいます。屋外は過酷すぎ、冷蔵庫内では温度が低すぎて菌の活動が抑えられ、発酵がすすみません。
発酵食品は、貯蔵している間に菌の活動が進んでいきますから、生き物として扱う必要があるのです。こんなとき、過酷な自然の気候を和らげながらも、緩やかに自然のリズムを刻む「第二の自然」の空間があったら… 味噌だけでなく、生姜やかぼちゃなど冷蔵庫より高めの温度を好む野菜や果物も、より適切な状態で保管できるようになるでしょう。
湿度と温度の専門企業ピーエスは、自然と技術を融合させ、貯蔵するものや貯蔵の目的、ライフスタイルに合わせて美食を探求するための21世紀の貯蔵スタイルとして、PS Cantinaを開発しました。
屋外と、冷蔵庫の間に、貯蔵のためのPS Cantinaがある。
東京生活にぴったりな「21世紀の蔵」ともいえるでしょうか。
5月になって25度を超える日が続き、味噌の中で麹菌が活発に動きはじめました。これから暑さのおさまる10月位までは、PS Cantinaがピッタリの貯蔵空間として活躍しそうです。
PS dialogue 2014.5
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今後の味噌の様子、またお伝えします。(C)