ある動植物園が人気を呼んでいる。
夏の日の人気は北極館という名のパビリオン。シロクマが涼しい中で元気に動き回っている。パビリオンには仕切りのガラス面はない。だから人間もシロクマが快適と思う涼しさを一緒に体験できるのだ。シロクマを見るだけでは飽き足らず、本を持ち込んで読書する人も現れた。また夜のミュージアムという名のパビリオンは、夜行性の動物たちが動き回る夜にだけオープンしている。ここには夜型人間が集まってきて、夜通しおしゃべりなどして良いことになっている。そのうちに、研究者や受験生が集まるようになった。地中海ハウスという名の建物の中は、からっと爽やかな夏の気候であり、オリーブやオレンジなどがお目当ての人々に人気だ。雨の日など、お茶のついでに傘やコートを乾かすためにやってくるお客も現れた。園内のあちこちに茶室があるのも特徴。それぞれのパビリオンの気候の中に、木と和紙だけでできた2畳の茶室が設えられ、お茶をいただきながらその気候をさらにじっくり味わうことができるのである。集中しやすい場所なのか、なぜかビジネスマンが商談の場として足を運ぶようになった。
気候動植物園を体験した人々は、いろいろな地域の気候があるということを知って楽しくなった。そして、気候はどこかの部屋だとか仕切られたガラスの中にあるものじゃなく、外から室内へ、そして自分がいる空間に持ち込むことができるものだとわかった。また、気候がちがえばやりたいこともちがってくる、逆に、自分の仕事場や住まいにもいろいろな気候をつくってみたくなった。
気候動植物園を我が街にもつくりたい、という声も出てきた。気候をつくるって、いったい誰ができるの?この気候動植物園の裏の役者は誰なの?人々はいったい誰に相談したらよいのか、動植物園の相談コーナーに電話した。電話案内のお姉さんがこっそり教えてくれる。「ここだけのお話ですよ。東京の代々木公園の隣にあるピーエスジャングルというところに行ってごらんなさい。」とだけ。え?ジャングル?首をかしげながらも相談者は行ってみることにした。
この物語はここでおしまい。次はあなたが行ってみる番ですよ。
PS dialogue 2014.3
ピーエスジャングルには、不思議な動物たちがいます。是非会いに来てください。