「奥さま、もしこの住まいで最初に暖かくするポイントをお考えでしたら、私は玄関をお薦めしますよ。」
「あら、そうですか?私はやっぱりお風呂場だと思うのですけれど・・・。」
「奥さん、脱衣室を暖かくするのは大切なことです。濡れた体を寒さにさらすのは辛いことですから。」
「ではなぜ玄関ですの?」
「はい。たいてい、家の寒さというのは玄関から入ってくるものです。リビングや寝室などの部屋のつくりはしっかりしており、隙間風も最近ではあまり入ってきません。しかし、外に面している玄関からは、ひんやり冷気が入ってくるのです。そして、その冷気は暖房されていない廊下からキッチンやリビングへ、じわりじわり流れてくるのです。」
「そう言われてみるとそうですね。」
「そこで玄関をまず暖かくするのです。外からの冷気をシャットアウトします。さらに、玄関で暖められた空気は、廊下や各部屋の入り口のあたりまで広がりますから、なんとなく家全体が少し温まるのです。外から冷気が持ち込まれることがなければ、他の部屋はわりと安定して暖かい状態に保てるというわけなのです。また、暖かい空気は上へ自然に対流しますから、例えばベンチタイプの暖房デザインで腰のあたりまで設備を設えれば、自然に空間の上の方まで暖かくなるのです。」
「どうですか、奥さま。」
「わかりました。あなたに相談して良かったわ。それではさっそく、お願いしますねピーエスさん。」
PS dialogue 2014.1
暖かさのデザインで、空間の使い方が広がりますね。
ベンチを組み合わせると、こども、妊婦、お年寄りにも使いやすい機能的な空間になります。